倒れた怪人と、そこに集まる兵士たち。傷ついた仲間を庇うように、村田が一人、うろたんだーと対峙していた。
「KAITO」
　 一触即発のムードの中、村田がゆっくりと剣を抜く。
「私と一対一で勝負だ」
　 強い目でKAITOを見据え言った言葉に、ふっとKAITOが笑う。
「……いいだろう。久々のタイマンだな」
　 KAITOと村田の合図で部下たちが一斉に下がる。睨みあう二人。先に動いたのは村田だった。
「レン！」
「！？」
　 瞬間、叫んだKAITOに村田が目を見開く。どこからか出てきたレンが、村田の足元にバナナの皮を投げていた。
「ぬおおっ」
　 足が滑り、体勢を崩す村田。すかさずKAITOが続ける。
「ミク！　MEIKO！」
　 KAITOの真後ろに隠れていたミクがネギのような物を両手に飛び出した。コマのように回転して村田を数歩分弾き飛ばす。ぎりぎり踏みとどまった村田の頭上に、MEIKOの一升瓶が直撃した。
「ぐあっ」
　 ミクとMEIKOが、さっとその場から退く。
　 村田の額に、一筋の赤い血が流れた。
「隊長！」
　 大人しく下がっていたジャスティス隊員たちが叫び、駆け寄ろうとするが、村田はそれを手で制す。
「KAITO……！　貴様の一対一とは、」
「リン！」
　 村田の言葉を遮って、再びKAITOが仲間の名前を呼んだ。KAITOの後ろから見慣れた重機が村田へと向かう。
「ロードローラー！」
　 リンの楽しそうな声が響き渡る。村田は一瞬下がりかけた後、覚悟を決めたようにその場に留まる。そして、
「え」
「ぬおおおおお」
　 両手をいっぱいに広げ、村田はローラーを受け止めた。
「嘘っ」
「リン！」
「駄目、動かない！」
　 エンジン音が激しくなる。それでもロードローラーは動かない。村田の体が少し膨らんだ気がする。
　 村田は青筋を立てながら、ついにはそれを持ち上げ、背後へと放り投げた。
「なっ……」
「きゃああああ」
　 リンの悲鳴が遠ざかる。村田は肩で息をしつつ、KAITOから目を離さない。
「さあ、KAITO。仲間にばかり頼っていないで私と、」
「あ、あそこで妊婦さんが困ってる！」
「何っ！？」
　 反射的にKAITOの指した方向へと目をやった村田。その隙にKAITOが迫る。
「アイスソード！」
　 構えたスイカバーのようなものに、ついに村田は遥か上空へと弾き飛ばされた。
「卑怯者ー！」
　 その叫びも、最早KAITOたちには届かない。
「隊長ー！」
　 隊員たちが慌てて村田を追いかける。静かになったその場所に、うろたんだーたちも集まってきていた。
「リン、大丈夫か」
　 その中にリンの姿を見つけ、KAITOが声をかける。
「大丈夫！　でもロードローラーに傷付いちゃった。直せるかな」
「どうせならジャスティスにやらせてぇな、それ」
　 リンを助けに向かっていたレンが、怒りもあるのか強い口調で言う。
「そうだな……。泣き落としでもしてみるか？」
「あ、それ私やるー！」
　 KAITOの提案にミクが元気良く手を挙げた。
「リンにとっては大事なものだもんね。ついでにもっと強化できれば言うことないんだけど」
　 MEIKOがリンの頭にぽんと手を置く。リンは嬉しそうに頷いた。

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