没ネタ03

 KAITOたちについて出ようとしたとき、ふとレンがMEIKOに抑えられているのに気付く。口を塞がれ、引きずられるように外へ出た。何だろう、と思いつつミクは慌ててその後を追った。
 しばらくして、KAITOとMEIKOが同時に立ち止まる。まだ、車を止めた駐車場までは遠い。
 そこでようやくレンの口からMEIKOの手が離される。レンはぱっとMEIKOから離れると二人を睨みつけるようにしてその場に立った。
「何だよ! ホントにこのまま帰るつもりか!?」
「まさか」
 MEIKOの答えは早く、そして冷たかった。
「え?」
 驚きの声を返したのはミクだけ。レンは少し落ち着いたように息を吐く。
「だよな? おれもリンに会うまでは絶対帰らない」
「会うどころか…場合によっては連れ戻しになりそうだね」
 KAITOがため息をつきながら言った。
「あんたここに来るまで気付いてなかったの?」
「おれはあの客見てないんだよ。他の客の対応してたし」
「あの……どういうこと?」
 ミクの疑問に2人の会話が止まる。KAITOは迷うように唸って、そのまま視線をMEIKOに向けた。MEIKOはミクへ目を向ける。
「今の客、あんたに何を求めたかわかった?」
「……多分、セックス機能」
「そうね」
 男性からオプションを聞かれてがっかりされる大半の理由はそれだと聞いた。そこでふと、ミクはレンの方に目を向ける。
「リンちゃんは……」
「付いてねぇよ。おれらは14歳の設定だ」
 セックス機能を付けていいのは15歳から。そう、定められている。ただし設定年齢なんてものは人間の都合で好きになるのであまり意味を成しているものではな いが。
「……それ知ってて買ったはずだよね?」
 KAITOの疑問に答えたのはレンだった。
「まあな。何とか15歳ってことに出来ないかとは言われた」
「そっか……」
 KAITOが先ほど出たばかりの家を向く。何か考えているようだった。それは、その隣のMEIKOも同じ。ミクはおろおろとレンに目を向ける。レンと目が合い、何だよと問われるがミクに言えることは何もない。
「……連れ戻す…の?」
「違法行為をしている可能性は高い」
「アンドロイドの印象だけじゃどうにもならないけどね」
「そうだミク!」
「え、え?」
 突然KAITOがミクの肩を掴んできた。戸惑っていると手を、目の辺りにかざされ る。
「ミク、撮影機能あるって言ったよね?」
「う、うん……あ、じゃなくて、はい!」
「敬語はいいよ。何とかリンの様子を撮影できれば…」
 KAITOが、今度はレンに目を向ける。
「レン、今リンがどこに居るかわかる?」
「ここからじゃあの家ってことぐらいしか…もっと近づけば正確にわかる」
「そっか」
「まさか…忍び込むのか?」
「それはさすがに犯罪だわねー」
「そんな主任に迷惑かかることはしないよ。まずはあの男を家から出して…」
「でも…もしリンが動けない状況にあったら?」
「それなんだよねー。窓から見えるってこともないだろうし」
 そこでKAITOがレンへと目をやった。
「……あの人ロリコンだよね」
「……おれの女装じゃばれるぞ。リンと顔一緒なんだからな」
「同じタイプってことでどうだろう」
「少なくともしばらく間を置かないとばれるわよ」
「だよねー」
「あ、あの」
「ん?」
 会話を聞きながら、ミクは自分に出来ることはないかとひたすら考えていた。
「私……じゃ、駄目かな」
「……あんたも今会ったばかりでしょ」
「私、結構同タイプがいるの。髪形とか服装とかが違うぐらいで、でもみんなちゃんと見分けるし、」
「変装ってことか…」
「でも別人と認識してくれたところで、そもそも何て言って潜り込むわけ?」
「出張販売?」
「……アンドロイド一人では来ないわよ普通」
「だね。人間が要る」
 おれ、人間に変装できるかなぁ。
 KAITOの呟きに、話が進んでいっているのを感じた。ミクは拳を握り締める。緊張してきていた。
 アンドロイドの違法使用を、ミクが前にいた店の主人はいつも嘆いていた。そんなことをするために生まれたんじゃないのに、と。
 だからだろうか。
 主人を悲しませるような出来事は、何とかなくしたいと思う。


 

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