死んでしまえばいい

【閉じ込められる。出られない。憎い相手がいる。殺したい。 武器と事情。そして機会。そうだ。死んでしまえばいい……】

 私はあなたが憎い。
 おれはお前が憎い。
 ぼくは自分が憎い。
 だから。
 だから。
 だから。

三人 死んでしまえばいい。

 冷蔵庫の中、何がある?
 んー……梅酒、牛乳、ポンジュース、六甲のおいしい水……。
 そう。
 それだけあればしばらくは持つね。
 しばらくは……ね。

   間。

 お前ってさ、体重何キロ?
 何よいきなり。
 脂肪がどれくらいあるか聞いてるんだよ。
 あ、そう。でもおあいにく様。わたしは40キロジャスト。見れば わかるでしょ。食べるところなんてないわよ。
 うん。一番大きいのは君だ。
 おれ?
 あ、そうね。見るからにそうね。
 おれを食べるのか?
 何か、まずそう。
 同感だわ。

   間。

 私ね、牛は嫌いだけど牛肉は好きなの。
 ぼくも鳥は嫌いだけど鶏肉は好きだな。
 形を変えることによって生まれる愛ってあるよな。
 そうね。それが自分のためになるなら尚更ね。

   間。

 私、殺すなら一番憎い奴を殺すわ。そうしたら、少し愛せそうな 気がするの。
 おれも。
 ぼくも。

   間。

 冷蔵庫の中には二挺の拳銃がある。
 よく冷えてるな。
 きっと使えるわ。
 ああ、お腹空いたな……。

   間。

 私、あなたが憎いわ。
 おれもお前が憎いよ。

   間。

 結末は二つに一つ。
 おれが死ぬか。お前が死ぬか。

   間。
   銃声二つ。

 結末はあと二つ。二人とも生きるか。……二人とも死ぬか。 そして……。

   間。

 ぼくは、自分が憎いんだ。

   銃声。

−幕−


声劇用脚本一覧へ戻る
TOPへ戻る