【閉じ込められる。出られない。憎い相手がいる。殺したい。 武器と事情。そして機会。そうだ。死んでしまえばいい……】
あ 私はあなたが憎い。
い おれはお前が憎い。
う ぼくは自分が憎い。
あ だから。
い だから。
う だから。
三人 死んでしまえばいい。
あ 冷蔵庫の中、何がある?
い んー……梅酒、牛乳、ポンジュース、六甲のおいしい水……。
あ そう。
う それだけあればしばらくは持つね。
あ しばらくは……ね。
い お前ってさ、体重何キロ?
あ 何よいきなり。
う 脂肪がどれくらいあるか聞いてるんだよ。
あ あ、そう。でもおあいにく様。わたしは40キロジャスト。見れば
わかるでしょ。食べるところなんてないわよ。
う うん。一番大きいのは君だ。
い おれ?
あ あ、そうね。見るからにそうね。
い おれを食べるのか?
う 何か、まずそう。
あ 同感だわ。
あ 私ね、牛は嫌いだけど牛肉は好きなの。
う ぼくも鳥は嫌いだけど鶏肉は好きだな。
い 形を変えることによって生まれる愛ってあるよな。
あ そうね。それが自分のためになるなら尚更ね。
あ 私、殺すなら一番憎い奴を殺すわ。そうしたら、少し愛せそうな
気がするの。
い おれも。
う ぼくも。
う 冷蔵庫の中には二挺の拳銃がある。
い よく冷えてるな。
あ きっと使えるわ。
う ああ、お腹空いたな……。
あ 私、あなたが憎いわ。
い おれもお前が憎いよ。
あ 結末は二つに一つ。
い おれが死ぬか。お前が死ぬか。
う 結末はあと二つ。二人とも生きるか。……二人とも死ぬか。 そして……。
間。う ぼくは、自分が憎いんだ。
銃声。