カミダマ

【忍者の任務は毎日大変。今日も邪魔され、裏切られ。 隣町の町長さんへ無事、巻物を届けられるのか? 欠かせないのは友情、努力、そして……?】

   どたばたと走る音。
   がらっとふすまが開く。

リキ 唯根リキ、ただいま参りました!遅れてすみません!

   間。

リキ あれ?先生は?
キリ まだ来てないの。お兄ちゃん、また二度寝したの?
リキ 違う!ちゃんと間に合うように家は出たんだ。なのに 途中で健児が邪魔して……あああ〜!健児!お前何で先に 来てんだよ!
健児 おれの足の速さをなめちゃあいけない。
リキ ちっくしょう。しかもお前どこ座ってんだよ!そこは おれの席だ!
健児 そんなもん決まってないでしょ。君もたまには前座ればー?
リキ やかましいっ。どけっ!
健児 嫌だよ。
リキ どけったらどけ!おい、進、てめえも何か言え。
竜之進 遅刻したお前が悪い。健児はちゃんと時間前に 来た。
健児 そうだよねー。進ちゃんなんかおれより更に早かったんだよ? ちょっと見習わなくっちゃー。
リキ てめえが邪魔したからだろう!
健児 人聞きの悪い。あれくらいのトラップ避けられなくちゃ 忍者失格だよ。
キリ ええ?健児くん、トラップなんて仕掛けたの?
健児 修行だよ修行ー。ちなみに進ちゃんの通り道でもあったんだけどね。
竜之進 おれはあの程度のトラップには引っかからない。
健児 ねえー。普通そうだよねー?
リキ うるさいっ!おれだって全部引っかかったわけじゃねえよ! それに急いでたんだ。
竜之進 忍者は常に素早い動きを心掛けるもんだ。
健児 進ちゃんいいこと言う。
 おおーい。うるさいぞーお前ら。
健児・キリ・リキ あ。先生!
 んー全員いるなー。それじゃ、今日の任務を渡すぞ。
キリ 今日は何をするんですか。
 この巻物を、隣町の町長のとこまで届けること。
リキ たったそれだけ?
 む。これはなかなか大変なんだぞ。まず。山を越えなきゃならない。
キリ まあここは山に囲まれてるしね。
 山には獣がいっぱい出る。
健児 問題ない、問題ない。
 邪魔しようとする輩もいる。
竜之進 いつものことだ。
 巻物は全部で4本ある。
リキ 1人1本で解決じゃん。結局それだけなんだろー。
 制限時間は1時間。
全員 何ー!?
リキ ど、どういうことだよ!?1時間って!?
キリ 普通隣村までなら丸一日くらいは猶予をくれるもんじゃ ないですか?
 あーそれはねー。
健児 何?
 一昨日受けた任務をすっかり忘れてたの。

   間。

リキ それでも上司かてめえ!
キリ 上司の失敗は部下にかかってくるものよね。
リキ 平然とした口調で泣いてんじゃねえ!
竜之進 とにかく急ごう。
健児 そうだよ。任務失敗したらきつーい罰が待ってるんだよ?
リキ 先生が受けろ!先生が!
 ごめんなーみんなー。
リキ 誠意がない。誠意が!
キリ もうお兄ちゃん!そんなこといいから早く行きましょう!
健児 先生、巻物は?
 あーこれとこれとこれと、
リキ とっととよこせー!行くぞ、みんな!
 あ、おい……。
全員 おう!

   だだだだだ、と駆けていく音。

 子供はいつも元気だねー。さて、間に合うかな……。

 

   外を駆けている音。

キリ お兄ちゃん、このペースで間に合うの?
リキ アクシデントがなきゃあ何とかなる!
健児 アクシデントがなきゃね……。
キリ あ!
リキ 何だ?

   どさっと落ちる音。

キリ ……ぶないって言おうとしたんだけど……。
健児 うわあ、落とし穴。
キリ こんな古典的なものに引っかからないでよお兄ちゃん……。
リキ うるせえ!早く引き上げろ!
健児 こいつ、置いてく?
竜之進 巻物の1つはリキが持ってるんじゃないのか。
健児 あ、そっか。リキー巻物だけでもこっち投げてくんない?
リキ 誰がやるか!早く引き上げろ!
健児 わがままだなあ。
キリ 健児くん!
健児 え、うわあ!
竜之進 大丈夫か?
健児 ああ、かすっただけ。
 ふうん。あれを避けるとはなかなかやるわねぇ。
健児 な。
キリ 誰よ、あなた。
 ふふふ。言うと思うぅ?
リキ おーい。何があったんだー。
 一人は穴の中かぁ。ま。私もあんなもんでやれるとは思ってなかったから どうでもいいんだけど。
竜之進 何が目的だ。
 決まってるじゃない。巻物よ。巻物。私も上司から命令されて んのよねぇ。巻物奪ってこいって。それ、隣町の町長に届ける分でしょお?
竜之進 違うな。
 え?
キリ そ、そうよ。これは港町の町長さんに届けるものよ!
 道、逆方向じゃない。
キリ あ。
 そんな嘘で騙されてると思ってぇ?ちゃあんと調べはついてるん だからねえ。
健児 調べって……。
 あなたたちが巻物を持ってここを通るってこと。にしても遅いわよ、 あなたたち。二日前からずうっと待ってたんだからね。おかげで トラップの大半は動物が引っかかって駄目になっちゃったじゃない。
健児 成る程。じゃあこの落とし穴は。
キリ 動物でも引っ掛からない程簡単な罠。
リキ 言ってないで早く助けろー!
健児 置いてけ。こんな奴。
キリ 私もちょっとそう思っちゃった。
竜之進 巻物は……。
健児 ああ。わかってるわかってる。ま、まずはこいつを何とか することだろ。
 あら。私もさすがに3人いっぺんに相手するのはきついわねぇ。 ちょっと助っ人にでも来てもらいましょうか。
健児 まだいるの!?
 リュウ!出てらっしゃい!
リュウ へいへーい。よお!久しぶりだな、みんな!
キリ・健児・竜之進 リュウ!
 何?あなたたち知り合い?
リュウ ちょおっとね。
健児 どういうことだよリュウ!お前この間の任務でおれたちを 助けてくれたじゃないか!
キリ 味方だって言ったのは嘘だったの?
リュウ いや、まあね。おれもお前たちとは長い付き合いだからさー。 あんまり戦いたくはないんだけどー。ま、世の中金ってことかな。
健児 君は、金でおれたちを裏切ったの!
竜之進 貴様……忍者の風上にも置けんな。
リュウ おおっと、進ちゃん刀抜くのはまだ早いって。 まずはさ、
竜之進 まずは?

   爆発音。

リュウ 先手必勝ってね。
 やることがえぐいわね、あなた。
リュウ 大丈夫、死にはしないよ。火薬使い過ぎて巻物まで ぼろぼろになっちゃったらやばいもんな。
 そういうことじゃないんだけど。
リュウ さーて巻物取りに行くか。
 あ、ちょっと待ちなさいよ。
リュウ 誰が持ってるかなー。お、キリちゃん発見。
 リュウ!危ない!
リュウ え?

   間。

リュウ し、進ちゃん……。
竜之進 やってくれたな。
リュウ ちょ、ちょっと刀抜くのは早いって言ったじゃん……。
竜之進 黙れ。
リュウ そ、そのおれの首筋に当てた刀取ってくれたらねえ。 落ち着いて話せないじゃん。
竜之進 話す必要はない。
リュウ 進ちゃ〜ん……。
竜之進 任務遂行の障害となるものは消す。それが掟だ。
健児 進ちゃん。
竜之進 健児、気が付いたか。
健児 何やってんの。
竜之進 こいつを殺す。
健児 進ちゃん!
リュウ …………。
キリ ちょっと進くん!リュウくんは……。
竜之進 仲間じゃない。
キリ …………。
竜之進 裏切り者だ。
リュウ は、はは……。確かにそうだけどー……命ごいしていい?
竜之進 駄目だ。……そこの女も動くな。
 ……言っとくけど、そいつには私に対しての人質の価値は ないわよ?
リュウ 昨日会ったばっかだもんねえ……。
竜之進 関係ない。両方殺す。健児、キリ、そいつを捕まえろ。
 なあに?私を捕まえようって言うの?やれるもんならやって みなさいよ。
リキ おいこらー!何がどうなってるんだー!早く出せー!
健児 ま、とりあえずやろっか。キリちゃん。
キリ え……。
健児 今おれたちがやるべきはあの女を捕らえること。
キリ そうね。
 ふん。2人で私に勝てるかしら。
リキ 出せー!
キリ 進くん。まだリュウくん、殺さないでね。
竜之進 …………。
キリ 行くわよ!
健児 おお!

 

 きゃああああああああああああああ!

   斬る音。倒れる音。

竜之進 よくやった。

   キリ・健児、息を切らしている。

竜之進 それじゃあ後はお前だな。
リュウ 進ちゃん……。
キリ 待って進くん!
竜之進 何だ。
キリ え、えっと……こ、殺さなくてもいいんじゃないかな。
健児 そうそう。この女が死んだ今、こいつがおれたちを狙う 理由もなくなったんだし。
竜之進 また同じことを繰り返さんとも限らん。
健児 でも今は関係ないじゃん。それに早くしないと任務が……。
竜之進 5秒で終わる。
健児 進ちゃん……。
竜之進 遺言は何かあるか。
リュウ 助けてよ……進ちゃん……。
竜之進 駄目だ。
リキ お前らああああああ!
健児 うわ!
キリ お兄ちゃん!
健児 自力で這い上がって来たの?
キリ すっごーい……。
リキ お前ら何やってんだ!任務はどうした!……あれ、リュウじゃないか。
リュウ 遅いよ、リキちゃん……。
リキ お前何やってんだ?言っとくがおれたちは今遊んでる暇は ないんだ!おい、みんな行くぞ!
健児 あ。
竜之進 待てリキ。こいつを始末してからだ。
リキ あ?何でだ?
竜之進 こいつはおれたちを裏切った。
リキ ふうん。
竜之進 貴様は何とも思わないのかっ!
リキ 裏切ったって証拠は?
竜之進 こいつは敵に加勢しておれたちから巻物を奪おうとした。
リキ じゃああっちを裏切ってないって証拠は?
竜之進 は?
キリ お兄ちゃん、何言ってるの?
リキ いや、だってさー。最初にどっちについてたか わかんねえじゃん。元々おれたちと同じ班の人間じゃないし。 何度か助けてくれただけだろう?
竜之進 でも!
リキ リュウー。お前どうなんだ?おれたちの仲間なのか?
リュウ 仲間だと言った覚えはないね……。
キリ リュウくん……。
リュウ 別に向こうの人間でもないけどな。ただたまに金で 雇われるだけ。……前にお前らを助けたのは気まぐれだよ。
健児 あー……そうなの。
リキ 初めっから味方じゃないなー。おれたちが勝手に思ってた だけじゃないか。
竜之進 だが。
リキ あーうるさいな。文句があるなら任務を完了した後に しろ。後15分しか残ってねえぞ?
キリ うわあホント!間に合わないじゃない!
健児 諦める?
リキ 馬鹿言うな!お前罰受けたいのか!?
キリ でも確かに15分じゃ隣町までは無理よねえ。町長さんの家、結構 奥だし。
リュウ 近道教えてあげようか?
キリ ホント!?リュウくん。
リュウ 3000円でいいよ。
竜之進 何?
リュウ い……いや、じゃ100円でいい……。
竜之進 何?
リュウ 10円!
竜之進 何?
リュウ 1円!
キリ ただにするのは嫌なのね。
リュウ それがおれの仕事なんだよ。
リキ 1円くらいやるから早く教えろ。
リュウ OK。ついてきてみんな。
リキ おう!
健児 はいはい。

 

リキ な、何とか間に合った……。
キリ これで……罰受けずにすむわね……。
健児 おれもう疲れた。
竜之進 とっとと渡しに行くぞ。
 いやあ、みんなご苦労ご苦労。

   間。

全員 先生!
リキ な、何で先生がここに?
キリ 私たちちゃんと巻物持って……。
 だってなあ。お前ら巻物1個忘れてっただろ。 誰が巻物持ってる?
キリ はい。
健児 はい。
竜之進 はい。
リキ あ……。
キリ お兄ちゃん!
竜之進 ……お前持ってなかったのか。
リキ ……悪い。
 お前らが取りに戻ってくるかと思ってたんだけど、こないから。 仕方なくおれが直接来たってわけだ。
キリ 先生……出発したのどれくらいです?
 お前らが出てって……30分くらいかな。
キリ それで間に合ったんですか!
 お前ねえ、おれはこれでも先生だよ?
健児 じゃあ最初から行けばいいじゃん……。
リキ 忘れてたのはてめえなんだからさ……。
 まあまあ。これもいい修行。さ、巻物渡しに行くぞ。
リキ・キリ・健児 はあ〜い……。

 

 すみませ〜ん。町長さんのお宅ですか?頼まれてた巻物を……え? 何ですって?
リキ 何だろ。
 ええええええっ。
健児 ど、どうしたんですか。先生。
 町長さん……町外れに引っ越したって。
全員 何ー!?
 じ、時間は……。
リュウ 後20秒ですねえ。
竜之進 絶望、だな。
リキ 落ち着いて言うなー!
リュウ まあまあ。仕方ないじゃない。
リキ お前は関係ないからいいけどな!
竜之進 いや。そもそもこいつのせいで……。
リュウ え?
キリ とにかく謝りに行きましょうよ。
 というわけで先生は逃げる!
健児 先生!
リュウ わあ〜進ちゃん、いい加減機嫌直そうよ!
キリ だから謝れば何とか。
健児 どうすんの!おれたちだけで罰を受けるの!
リキ ああ〜!いい加減にしろ〜!!

 

 今日もまた任務失敗、と。やれやれ。班編成失敗だったかなあ。 ……おれも含めて、ね。

 

−幕−

<後記>
 元ネタは昔かいた漫画から。それにNARUTOや忍たまをあわせた 感じかなあ。忍たま見たことないけど。シリアスのつもりだったのに誰も認めてくれなかった……。 難しいなあ。シリアス脚本。

 

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