有終の美−私たちの結末−

【ここは高校演劇部。やる気のない部員たち。まとまりのない部。苛々するOG。価値観はそれぞれ。思いは上手く伝わらない。言いたいことはただ一つ。みんな、演劇好きだよね?】

   舞台は部室。
   本棚、ソファ、衣裳ケース等。
   男1(伊藤)と男2(重藤)はオセロをしている。
   男3(斎藤)は黙って漫画を読んでいる。
   女1(岡山)は絵を描いている。
   女2(中山)と女3(杉山)は何か話している。

男1 よっしゃー。三連勝〜。
男2 あーくそ。ちょいもう一回やろや。
男1 もう諦めって。お前弱過ぎ。
女2 何?オセロ?
女3 誰が持って来たん?シゲさん?
男2 おれやないですよ。部室にあったんです。
女3 この部室いろんなもんあるなあ。
男1 先輩やりましょや。こいつ弱過ぎ。
女2 それよりウノやろや。みんなで出来るぶん。

   男4(佐藤)入ってくる。

男4 こんにちはー。すみませーん、遅れましたー。
男1 おお佐藤。お前も入れや。
男4 何?
男1 ウノ。中ちゃんが持ってきたん。
男4 んー。おれはいいわ。
男2 おい、ほったらオセロやろや。オセロ。
男1 止めとけ。こいつめっちゃ弱いけん。
男2 お前が強いんやって。
男1 それ絶対違う。
女3 ねえ陽ちゃんもやる?ウノ。
女1 めんどくさいけん、ええわ。っていうかこれ早よ仕上げな。
女3 それ締切いつなん。
女1 明日。
女3 うわ、間に合うん?
女1 やばい。かなりやばい。
女3 さいちゃんはー?
男3 はい?何ですか。
女3 ウノやる?
男3 ああ、じゃあやります。
女3 じゃあ、えっと4人?シゲさんどうするん?
男2 やります。
女3 じゃあ5人やね。配るよ。

   女3、配り始める。

男4 あの、それより部活やらないんですか。
女3 ええ?
女2 面倒くさい。
男1 っていうか、もう雨降っとると何もやる気せんよな。
女2 わかるー。雨降っとると発声も出来んしねー。
女3 はい。じゃあ好きなんとって。……佐藤くんはホントにせんの?
男4 ……いいです。
男2 おお、何かすごいんが来たで。
女2 うわ、何か私のめちゃくちゃやん。
女3 ジャンケンー。最初はグー。ジャンケンポン。
男2 おお、一発で決まった。
女3 じゃあ雅くんからやね。時計周り。
男1 っていうかいきなり出すもんないし。
男2 はは……。

   5人、ウノをやっている。
   男4、女1に話し掛ける。

男4 陽子先輩。
女1 何?
男4 何やってるんですか?
女1 原稿。明日締切なんよ。マジで。
男4 部活やらないんですか?
女1 そんな暇ないって。
男4 でも、
女1 あーー!あんたが話し掛けるけん、失敗したやないの。あーあ……。

   女1、ずっと絵を描いている。
   男4、手持ちぶたさになり、本棚から本を取り出して読み始める。
   ウノをやっていた5人、誰か一人があがる。

男1 (誰のセリフでも可)うわ、早過ぎ。
女2 (同上)なんなん、どんなカードやったん。
女3 よし、もう一回やろ。
女2 あ、そうや。シゲさん、これ、こないだ借りとったCD。
男2 おお、忘れとった。
女3 あーそうやCD!ごめん、雅くん。今度絶対返すけん。
男1 ああ、いつでもいいですよ。別に。

   部室を外から眺めている人物。
   少し迷いながら入ってくる。

女4 こんにちはー。
女3 ああ!先輩!こんにちは。
全員 (口々に)こんにちはー。
女4 部活やりよる?
女3 これからやるところです。
女4 何かウノがあるんやけど。
女3 (笑って)気のせいです、気のせい。
女2 っていうか雨降ってるから発声出来ないんですよー。
女4 傘差してやればー?
男1 うわ、怪しー。
女3 先輩もウノやりますか。
女4 おいおい、部活は。
男2 何か今日もうやる気しないっすよ。なあ?
男3 え?んー。別に……。
女4 あかんなあ。演劇部いつからこんなんなったん?
女3 ええ?前からこうじゃないですかー?
女2 っていうかこれもう配っていい?
男1 お、配ろや、配ろや。

   男4、女4の傍にくる。

女4 やあ佐藤。
男4 先輩〜。
女4 この状況、どうよ?
男4 もう、最悪ですよ〜。誰もやる気ないんですから。
女4 ほんとになあ。しばらくこんかったらこんなことになっとるとわなー。まあ君からのメールである程度は知っとったけど。
男4 先輩、もっと来て下さいよ。
女4 忙しいんよ、私は。今日もサークル前に寄っただけやし。普段バイトあるしなあ。
女3 ええー?先輩バイトしてるんですか?
女4 そら大学生にもなったら普通するやろ。
女2 私もしてますよ。
女4 こら。高校はバイト禁止やろ。
女2 そんなん、誰も守ってないじゃないですかー。
女4 ま、そうやけど。
男1 ほら、中ちゃんの番やで。
女2 あ、ごめん。

   間。

男4 先輩。
女4 何?
男4 こんなんで、大会なんか行けるんですか。
女4 行けんやろ。
男4 簡潔ですね。
女4 練習せんとどうにもならんもん。
男4 怒ってやって下さいよ。
女4 私、怒るん苦手なんよ。だいたい部員がここまでになったんも私が甘やかしたせいやってみんなに言われとるからなあ。
男4 そうなんですか。
女4 でも今の2、3年ってめっちゃ人数少なかったんやで?厳しくして止められたら困るやん。
男4 今年ってやっぱ多いんですか。
女4 多いわい。男子の方が多い言うんがすでにすごい。やから今年は期待しとったんやけどなあ。
男4 過去形ですか。
女4 これからの頑張り次第。君ら、はっきり言って演技最悪やしな。
男4 中山はそんなことないでしょう。
女4 まあな。でも声も小さいしかつぜつも悪いし。もっと練習せな。
男4 やっぱそれですか。
女4 あーもう部活やらんのやったら帰るわ。
男4 ええ?
女4 サークル、もう始まっとるし。
男4 ああ、そうなんですか。
女4 佐藤。
男4 はい。
女4 佐藤は、部活やりたい?
男4 ……そりゃやりたいですよ。でもみんながやる気ないから。
女4 佐藤。
男4 ……はい。
女4 演劇、好き?
男4 え?
女4 それじゃ。
女3 あ、帰るんですか。
女4 うん、サークルあるから。それじゃお疲れさまでしたー。
全員 (口々に)お疲れ様でしたー。

   5人、再びウノ。
   男4、何となく外に出る。
   傘を差して。

男4 あーーーーーーーーーー(発声)。あ、え、い、う、え、お、あ、お。

   照明FO。
   明かり。
   男3が漫画を読んでいる。
   他には誰もいない。
   男4が入ってくる。

男4 こんにちはー。あれ?斎藤だけ?
男3 うん。
男4 他の人らは?
男3 中ちゃんはバイト。陽子さんは何か用があるって。杉山先輩はまだ授業。
男4 男共は?
男3 さあ。まだ来てない。
男4 嘘ー。今日先輩来るのに。
男3 先輩?
男4 藤山先輩。
男3 ああ、そうなん。
男4 うん、昨日メールで。ちょうどバイトが開いたんやって。
男3 ふーん。
男4 なあ斎藤。
男3 ん?
男4 お前、演劇好き?
男3 え?ああ、演劇部は好きやで。そやなかったら入ってないって。
男4 違うって。演劇部じゃなくて。演劇、好き?
男3 どういうこと?
男4 だから。このメンバーじゃなくても、自分一人でも演劇好きか?
男3 あー。そういうこと。んー別に嫌いやないけど。つーかおれ途中入部やし?演劇なんか全然やってないやん。
男4 ああ、そうか。読み合せはやったことあるよな?
男3 ああ。前一回やったな。
男4 一回だけ?
男3 おれは一回しかやったことないで。
男4 前にやったのいつだったかなー。
男3 おれが入部してすぐやろ。
男4 すごい前だな、それ。

   男1、2入ってくる。

二人 こんにちはー。
男3 こんにちは。
男4 おお。
男2 あーめっちゃ疲れた。さっきの時間体育やったんやで。
男3 体育?何やったん?
男1 持久走。もうマジ疲れた。
男3 ははは。
男1 ちょいおれジュース買ってくるわ。
男2 あ、おれのも買ってきてや。
男1 自分で行けや。
男2 ええやん。別に。
男1 じゃジャンケン。
男2 おーし。
男1 最初はグー!ジャンケンポン!
男2 あああああああああ!
男1 決定ー。おれ、ポカリな(金を渡す)。
男2 何なんぞ、もうー。

   男2、ぶつぶつ言いながら出ていく。
   入違いに女4やってくる。

女4 こんにちはー。
男1 おう!こんにちは先輩!
女4 何かえらい少ないねー。
男4 シゲは今ジュース買いに行ってますよ。
女4 そう(座る)。
男1 今日、どしたんですか?
女4 んーバイトが休みになってね。久しぶりにずっとおれるなー思て。
男1 はー。

   間。

女4 杉ちゃんは?
男4 あーまだ授業だそうです。
女4 中ちゃんは?
男3 バイトです。
女4 ふーん。部誌ある?
男3 あ、どうぞ。

   女4、部誌を読み始める。

男1 何か最近落書き帳と化しとるよな、それ。
女4 あーウチらの頃もそんなもんやったよ。だいたい部誌書くんは公演終わった後とか暇な時ばっかやけんな。
男4 暇ですか、今。
女4 大会の練習しよるん?
男4 まだ脚本も決まってませんよ。
女4 早よ決めなやばいで。
男4 わかってますよ。

   男2、入ってくる。

男2 あ、先輩こんにちは。
女4 こんにちはー。
男2 雅。お前ポカリとコーヒーどっちがええ?
男1 はあ?ポカリに決まっとるやないか。
男3 何でコーヒーなん?
男2 ポカリ、一本買ったら売り切れたんよ!もう最悪やで。自販機の、ほとんど売り切れやもん。
男4 暑かったもんなあ。今日は。
女4 ねえ。

   間。

男1 何すか?
女4 君らさあ。読み合せとかしよるん?
男1 ……ああ、最近してないですね。
男2 発声もしよらんやろ。
男1 だって部長がやらんのやもん。
男2 やろ言うても誰も立たんしな(笑い)。
女4 君らさあ。何部?
男1 え?
男2 演劇部、ですよ。
女4 演劇やらんのに?

   間。

女4 前からなー気になっとっったんよ。漫画読むんも絵描くんも、確かに昔っからみんなやりよったけどな。やからって部活やりよらんかったわけやなかったで?みんな、やろ言うたらやるし。いつまでも別のことなんかしよらんし。

   間。

女4 君らさあ、演劇好き?
全員 …………。
女4 好きやないんやったら、演劇部止めよや。ウチらの頃はさ。みんな演劇が好きやったから。演劇やりたいから演劇部おったんやで?そんな、やりたないとか面倒くさい、とか言うんやったら演劇部止めよや?演劇はみんなでするもんなんやけん、やる気ない奴がおったら迷惑やろ。

   間。

女4 雅くん。
男1 はい。
女4 演劇、好きか?
男1 ……ええ、はあ……まあ。好きですけど。
女4 シゲさんは?
男2 ああ、嫌いじゃないすよ。
女4 さいちゃんは?
男3 ぼくも別に。好きですけど。
女4 じゃあ演劇やる?
男2 え?
女4 発声しよや。指導してやるけん。
男2 ええー発声ですか。
女4 何。
男2 いや、おれ発声苦手なんすよ。
男1 お前、そんなこと言わんとやれや。
男2 待ってや、おれ裏方志望やで。
男1 関係あるか、そんなの!斎藤だって脚本家志望やないか。
女4 あ、そうなの?
男3 ええ、まあ一応……。
女4 ふーん。まあいいわ。それじゃ発声やろ。
男1 はーい。

   女4が立ち上がると、だらだら付いていく。

女4 あ、発声のプリントは?
男4 ここにありますよ。
女4 うん。持ってきて。
男4 はい。

   全員、並ぶ。

男1 あー何か久しぶりや、発声。
男2 なあ、最近全然やってなかったよな。
男4 あーーーーーーーーーー!
男1 あーーーーーーーーーー!
男2 あーーーーーーーーーー!

   それぞれ発声を始める。
   女4、それぞれが途切れたところで。

女4 ふーん。みんなそれなりには出るんやね。
男3 おれ、あんなに出ないすよ。
女4 ああ、大丈夫大丈夫。声なんかやりよったら自然に出てくるようになるって。私も一年の時なんか全然出てなかったけん。
男3 そうなんですか?
女4 そうそう。君はあんまり出んの?
男3 はあ。
女4 じゃあ走りに行くか?走って柔軟した後やと声出るで。
男2 え?走るんですか?おれら、さっき走ったとこっすよ。
女4 授業で?
男2 はい。
男4 いいじゃん。走ろう。斎藤、お前体操服持ってるか。
男3 持っとるけど。
男4 よし。走ろ走ろ。

   男4、男3、部室に入って着替え出す。

男1 えーマジで走るん。
男2 面倒くさー。こんな、部活で走ったことなんかなかったやん。
女4 ええ?ウチらの頃は走りよったで。
男2 おれらはやってませんって。
女4 柔軟は?
男1 やってないっすよ、そんなもん。
女4 パントとか。
男1 何すかそれ。
女4 発声と読み合せ以外何もやったことないん?
男1 ないですよ。
女4 ふーん……。
男4 さ、行こうぜ。
男3 ああ、待ってや。
女4 君らは?
男2 ああ、じゃあ着替えますよ。

   男1、2着替え始める。

男4 先輩、明日も来れるんですか?
女4 うん、行くよ。明後日までは休みやけん。ちゃんと指導してやらい。
男4 おお。
女4 ただし、明日は授業あるけんちょっと遅れるけど。
男4 ちゃんと来て下さいよ。
女4 わかっとるって。

   男3、4、女4、去る。
   男1、2だらだらと着替えてる。

男2 マジで走るん?
男1 適当にやっときゃええって。
男2 先輩、明日も来るんやで。
男1 どうする?
男2 明日休もか。
男1 そうやなあ。

   男1、2、着替え終えて去る。
   暗転。
   明かり。
   部室には女1、2、3がいる。
   音楽を聞いている。

女3 あ、ちょっとこれかけていい?
女2 はい。何ですかそれ。
女3 ゆず。新曲。
女2 マジっすか?貸して下さいよ。
女3 1回100円。
女2 うわ、ひど。
女1 ゆずの新曲やったら私も持っとるよ。
女2 マジですか〜?貸して下さい〜。
女1 じゃあ明日持ってくらい。

   音楽、かかる。

女3 それにしてもシゲさんらどしたん?
女2 さあ。
女1 そういえば今日先輩が来るって言ってましたよ。
女3 え?藤山先輩?
女1 はい。何か昨日も男ら指導してたらしいですけど。
女3 ふーん……。じゃあ発声くらいしとこか。
女1 発声ですかー。
女2 佐藤くんが来てからでいいんじゃないですか。
女3 佐藤くん、遅いなあ。
女1 そういえばさいちゃんも来てませんね。
女2 さいちゃん今日来れんて。
女1 え?何で?
女2 さあ。
女3 あーそういやね、私もしばらくこれんけん。
女2 えー!?
女1 何でですかー!?
女3 いろいろ忙しいんやって。しばらくは君らでやりよってや。
女2 何か2年生どんどん来なくなりますねー。こんなんで大会大丈夫ですか?
女3 大会!そうやなあ。どうしよ。
女1 まだ何も決めてないんですか?
女3 まあいざとなったら先輩に書いてもらお。
女2 ああ、そうですね。

   女4入ってくる。

女4 こんにちはー。
全員 こんにちはー。
女3 先輩!ちょうどいいところに!
女4 ああ?
女3 今度の大会の脚本書いて下さいよ。
女4 はあ?まだ決めとらんの?これだけ人数おったら既成でも出来るやろ。
女2 既成、難しいじゃないですか。今回も当て役で書いて下さいよ。あ、舞台も楽なんにして下さいね。
女1 音響も!
女4 あんたらなあ……(座る)。あれ?そういえば男らは?
女2 佐藤くんは遅れてくるそうです。
女4 後は?
女2 まだ来てませんけど。あ。さいちゃんは来れんて。
女4 何で?
女2 さあ?
女4 あかんなあ。ウチらの頃は休むときはちゃんと理由も連絡入れよったで?
女1 そうなんですか?
女3 ウチらめちゃくちゃやな。
女2 何か気付いたらいませんよね。

   男4、入ってくる。

男4 こんにちはー。
女1 おお。きたきた。
女3 んじゃやろか。佐藤、発声やるで。
男4 はーい。

   全員、それぞれ外に出る。
   発声。音楽がかぶさり、声のみF・O。
   照明、暗くなる。
   端の方に男1、男2、男3が出てくる。
   何か話している。

男1 なあ、今日、部活、どうするよ。
男2 おれ、パス。っていうかおれ演劇部やめるわ。
男1 マジで?
男2 だってやる気せんで。大会なんかマジで出る気ある?
男3 ええー大会は出るやろ。今止める言うたら中ちゃんとか怒るで。
男2 でもやる気ない奴止め言うたん先輩やないか。
男1 はは。やる気ないんや。
男2 お前ら、だってやる気あるか?おれ、演技なんかしたないって。裏方志望やし。もともと。
男1 嘘、初耳やが(笑いながら)。
男3 おお、おれも初めて聞いたで。
男2 言うたっちゅうねん!いや、別に役者でもええけど!でもこんなしんどいんやったら嫌やわ。だってどうやったって出来ん、っちゅうねん。動け言われてもどうやっていいかわからんし。
男1 ちゃんと見せて欲しいよな。先輩も出来んのやったら言うな、ってな。
男2 おい、お前も出来んくせに言うやないか(笑いながら)。
男1 あっれー?でもおれほら、演出家やし。
男3 それも初めて聞いたで。
男1 え?これはマジやて。ちゃんと裏方もこないだ決めたやん。
男2 お前大道具やなかったん?
男1 大道具もやけど!一応演出家もやっとんやって。斎藤、お前照明やろ。
男3 うん、一応。
男1 一応って何や。
男3 だって何やってええかわからんのやもん。先輩に任せるわ。
男1 先輩も照明やったことないんやなかった?
男3 何とかなるやろって。今回、照明少ないけんな。
男2 これ藤山先輩が書いたんやろ。音響とか照明とか全然ないやん。
男3 そういうんにしろって中ちゃんらが言ったらしい。
男1 (笑って)先輩に対してええ度胸やな。あいつ。
男2 でも、おれホントこの台本嫌やわ。大体なんでおれが役者やねん。
男1 人数足らんのやけん仕方ないやろ。
男3 っていうかお前本気で止めるの?
男2 止める。
男1 お前もう練習入っとんのにそんなこと言うなや。練習入る前に言えって。
男2 言ったわい!でもあかん言われたんやけんしょうがないやろ!
男3 だからって練習始まってから止めるか?普通。
男2 知るか。おれマジで止めるけんな。中ちゃんらに言うとって。
男1 おい、待てえて。ほら、まあ、お前の気持ちもわかるけど。今お前が止めたら大会出れんなるんやけん。
男2 お前が出えや。
男1 嫌やわ。
男2 ほったらほんなん言うなや。お前だっって嫌やろ?おれも嫌やねん。
男3 ええーおれ、ちょっとだけ羨ましいとこもあるで。
男2 は?何が。
男3 だって杉山先輩とのラブシーンあるやん。
男2 あれラブシーンか?めっちゃ恥ずかしいんやけど。
男3 (男1に)でもあんなんええよな?
男1 いや。俺に言われても。
男2 お前やる?
男3 やろかなー。あーでも台詞覚えれんなー。
男1 え。マジでやるん?お前杉山先輩のこと好きなん?
男3 いや、好きやけど!別にそんなんやなくて!
男1 おーお前なんか怪しいなあ。
男2 よっしゃ斎藤のために役交替してやろ。残念やなあ。せっかくやる気やったのに。
男1 お前言うこと違うやないか。
男2 気のせいやって。じゃ中ちゃん言うてこようで。おれの役斎藤がやるって。
男3 えー待ってや、マジで?
男2 お前が言うたんやろ。
男3 心の準備させてや。
男1 何言うとんねん(笑う)。
男3 だってラブシーンやろ。あれ、先輩がこっち見てさ。

   舞台、反対側に照明。
   女3がいる。

女3 私、あなたのことが心配なの。このままでいいとは思えない。サッカー、好きなんでしょ?好きならやればいいじゃない。誰に何言われたって関係ないじゃない。

   男3、立ち上がって、女3の照明の方へ。

男3 そんなのおれの勝手だろ!おれはもうサッカーはやりたくないんだよ!お前の方こそ、もうこんなとこには来るなよ。
女3 どうしてよ!
男3 ……お前のことが心配なんだよ!

   男3、女3に抱きつく。

男4 待て待て待て!

   照明、明るくなる。
   場には男4、女1、女2。

男4 そこ、そんなセリフないだろ。動きだってない。
男3 アドリブ。
女3 アドリブ言われても先、続かんのやけど。
女1 さいちゃんセリフ覚えてないやろ。
男3 てへ。
男4 てへじゃない。てへじゃ!っていうか杉山先輩も怒りましょうよー。
女3 ごめん、私も次のセリフ覚えてない。
男4 あー!
女1 次なんやった?
女2 誰か台本ない?
男4 あーぼく、持ってますよ。

   男4、脚本持ってくる。

女2 えーっと、あったこれや。「女が来てるなんて言われたら先輩にまたなめられるんだよ」
男3 あー!そうやった。「お前だってこんなとこにいたら何言われるかわかんないぞ」だ!
女2 恥ずかしいなぁ。このセリフ。
女3 そういやさ、衣裳ってどうるすん?
女2 こないだ作るいうことになりましたよ。
女1 うん。私が作ってくる。佐藤とさいちゃんのユニフォームだけでええんやろ?
女3 そうやね。あとは制服やし。
女2 制服これでいいんですか?
女3 ええやろ、別に。私服高にするとややこしいし。
男4 マネージャーのユニフォームとか作らないんすか?
女2 マネージャーなんかいらんやろ。体操服でええやん。
男3 体操服ってめっちゃ名前書いてあるやん。
女2 ほんとよ!どうしよう?こいつの名前中山にする?

   女4、入ってくる。

女4 こんにちはー。
女1 先輩!いいところに!
女4 ん?
女2 これって衣裳ってどうするんですか?制服とユニフォームだけでいいですよね?
女4 あれ?一度私服になるシーンなかった?
女2 ああ、あれは回想だし着替える時間もないから制服でええんやないかってことになったんです。
女4 ふーん。別に制服でええんやない?ユニフォームも別に揃っとればええんやけん、作る必要もないやろ。
女1 ええ、作る気満々やったのに。
女4 いや、作ってもええけど。
男4 先輩〜。
女4 何?
男4 いまいちぼくのキャラ、つかめないんすけど。こいつ何でシュウジのこと止めさせたいんですか?
女4 ええ?書いてあるやん。
男4 でもこれだけじゃわかり辛いですよ〜。何か、これじゃおれ後輩の才能に嫉妬して止めさせようとするただのいじめっ子やないですか。
女4 そうよ。
男4 ええーマジで。
女2 え、私はなからそう思とったよ。
女1 佐藤は嫌われ役よな。
男4 どうせおれなんか。
女2 はいはい、じゃ続きやるよ。
男4 ああ、冷たい!
女4 そういえばさ、
男4 何ですか。
女4 シゲさんは?
女2 ああ……。
男4 止めました。
女4 は?
男4 やけん、シュウジの役今斎藤がやってるんですよ。
女4 え?じゃあ照明どうなるん?
女1 高ちゃんに頼んでますよ。ホントはシゲさんも照明はやる言うてたんですけどね。
男3 そういや雅も止めるかもしれないすよ。
女4 そうなん?
男4 あいつ全然きてないもんな。演出家やとか言っとんのに。
女4 演劇部、どんどん少ななるなあ。高ちゃんは部活きよるん?
女3 来てません。そろそろやばいんですけどね。
女2 もうやる気なくしますよ、ホント。みんな、セリフは覚えてこんし。
男3 だって長いんやもん!おれ途中からやし。
男4 先輩〜、この脚本。少し削りませんか。
女4 馬鹿言うな。
男4 そうですよねー……。
女2 さ、練習するよ。
男3 っていうかおれ腹減った……。
女4 あれ、まだ昼ご飯食べてないん?
女3 だって集まったんが11時やったんですよ。集合9時やったのに。
女4 はは。演劇部がルーズなんは昔からやな。
男3 ちょっとご飯にしよや。おれ買いに行ってくるわい。
女2 あ、私も行く。
女3 陽ちゃん買いに行く?
女1 ああ、ジュースだけ行くわ。ご飯持ってきとるけん。
女3 あ、私も。じゃ一緒にいこや。
女1 うん。

   4人、去る。

男4 せんぱい〜。
女4 何。
男4 どうします、もう本番まで二週間もないのに。全然揃わないんですよ。
女4 今日そろっとるやん。
男4 そうなんですよ!珍しく揃ってるのに全然通しやってないんですよ。セリフ覚えてないから進まないんですよー。
女4 ふうん。佐藤はセリフ覚えたん?
男4 それは聞かない約束です。
女4 何やそれ。
男4 あーおれやるんやったらシュウジが良かった。
女4 えーでもこれ当て役やで。
男4 マジっすか!?
女4 うん。シュウジはシゲさんのつもりやったんやけどね。勿論フミオは君。
男4 えー何か納得行かない。
女4 何で?君そのまんまやん。
男4 おれこんな性格悪くないすよ。
女4 フミオって性格悪いか?
男4 悪いやないすか!いじめっ子っすよ。
女4 最後、ちょっとええ奴やん。
男4 最後だけやないですか。あ、それよりこのサッカーシーンってマジでやるんですか。
女4 まあボールくらいは使ってもええんやない?リフティング出来ん?
男4 いやそれくらいは出来ますけど。もし舞台から落ちたりしたらやばいんやないですか。
女4 そうやなあ。紐でも付けとく?
男4 先輩〜。

   女1、女3、帰ってくる。

女1 あれ、佐藤は昼食べんの?
男4 ああ、おれ昼から用事あるんですよ。
女3 え、マジで?
男4 昨日から言ってたじゃないですか!だから集合9時だったんでしょ。
女3 そういえばそうやっけ。
男4 あーもう時間やし、それじゃお疲れ様でした。
女三人 (口々に)お疲れ様でした。

   間。

女4 佐藤、用事って何?
女3 さあ。あいついっつもああですから。
女4 いっつも?
女1 よく途中で帰ったりさぼったりしますよ。
女4 そうなん!?
女1 そうですよ!だからろくに合わせも出来ないんですよ。さいちゃんとの二人のシーンなんかさいちゃんいつも一人芝居ですよ。
女3 あれねえ、何とかならんの。
女1 先輩からも言っといて下さいよ。
女4 それは私も知らんかったな。忙しいとかそんなんじゃないん?
女1 ないですよ。単にやりたくないだけですよ。
女4 へー……。佐藤だけはやる気あると思っとったのになあ。
女3 やる気ある奴なんかいないんじゃないですか。
女4 大会で勝つ気ある?
女3 無理でしょ、それは。
女1 これでいけたらすごいわな。
女4 ふうーん……。あ、私もう帰るわ。
女1 ええ?帰るんですかぁ。
女4 佐藤おらんのやったら通し出来んやろ?サークル抜けてきたけん、帰る。
女3 ああ、お疲れ様でした。
女4 お疲れー。

   女4、帰る。

女3 先輩もあんま見に来てくれんよな。
女1 どうでもいいんやない?だって何聞いても好きにせえって言うやん。
女3 わからんから聞きよんのになあ。
女1 この脚本も昔の焼直しやろ。
女3 そうなん?
女1 前は7人の脚本やったんよ。削って書き直したんやって。
女3 へえ。ほかどんなんがおったんやろ。
女1 サッカー部員やろ。だって今のこの脚本、フミオが一人でシュウジいじめとるんやで?めっちゃ妙やん。
女3 ああ、ウチもそれは思たわ。サッカー部員2人しかおらんのか!って感じよな。
女1 マネージャーが2人おるのにな。

   二人、笑う。

女1 あーでもほんま、どうなるんやろ、演劇部。
女3 今の1年だけになったら潰れそうやな。
女1 みんなが本気出してくれたらなあ。
女3 まず私らがやらなね。
女1 はは、わかっとるんやけどね。中ちゃんがもうちょいしっかりしとったらな。
女3 中ちゃん、でもよおキレるよな。
女1 ああ、一昨日の私もびびったもん。でもあれくらいやないと男共は言うこと聞かんで。
女3 確かに反省しとったけどな。2、3日すればまた元のもくあみやん。
女1 どうすりゃええんやろ。
女3 もうすぐ大会やなあ。どこが勝つやろ。
女1 やる気のあるとこ。
女3 身も蓋もないこと言うのやめよや。
女1 話題代えよか。杉ちゃん、さいちゃんに告白された?
女3 何でそっちに話題がいくんよ!っていうか何でさいちゃん?
女1 ええ?さいちゃん、杉ちゃんのこと好きやん?
女3 知らんて、そんなん聞いたことないで。
女1 ええーあんなべたべたしよんやもん、付き合っとるんか思た。
女3 何でよ。
女1 だってさぁ……

   声F・O。
   男3にスポット。片手に携帯。

男3 うん、明日。明日が大会やけん。一番最後。絶対観にきてよ。……ええ?出とるに決まっとるやん。主役やけんな。……マジやって。……ああ、もし暇やったらシゲさんも連れてきてくれる?……違うって。シゲさん演劇部止めたんよ。……ああ、先輩も多分観にくる思うけど……ええやん!な?うん。それじゃ。……あ、ついでに差し入れとかない?……はい。……うん、ばいばい。

   携帯、切る。
   拍手の音。
   男3、ゆっくり中央に歩く。
   同時に照明F・I。
   男1、4。女1、2、3、4、椅子に座っている。
   男3、空いてる椅子に座る。
   全員拍手している。
   拍手、止まる。

男1 終わったな。
女3 あーやっぱりあの3校やったね。
女4 ま、予想はついとったけどな。
女2 ウチらがいけるわけないって。
男1 はい!終わったとこでカラオケ行く人!
女2 え、今から?
男1 そうです!
男4 待てや雅、おれ金ないて。
男1 先生の奢り。
女2 あれ?先生は?
女1 さっき向こうの席おるん見たで。
男3 落ち取るけん、ここにおりたくなかったんやろ。
女2 無責任な顧問やなー。
男1 それよりどうすんの?これから。打ち上げぐらい行こや。
女4 君ら反省会とかは?
女2 何ですか、それ。
女4 反省会は反省会やろ。やったことないん?
女2 ないですよ、そんなの。
女1 ああ、そういえば今の一年が入ってきてからなかったかも。
女4 何や、それ。
男3 っていうか今回は負けて当たり前やったしな。
女4 勝つ気なかったやろ。
男3 ええーありましたよ。普通に。な?
男1 (笑って)ごめん、おれなかった。
男3 ええー。
女3 あーでもしばらく楽になるねえ。
女1 もうめっちゃしんどかったもんね。
女3 わたし、そろそろ勉強せな。
女1 そうよ!大会終わったら新しい部長決めな。
女3 ああ、忘れとった。誰にする?
女2 ええ。部長てもう決めるんですか。
女1 うん、大会終わったら決める。雅くん、誰がいい?
男1 中ちゃんしかいないでしょ。
男3 おれもそう思う。
男4 あ、おれも。
女2 えーちょっとみんな、待ってや。
男4 それともおれたち男にやってほしい?
女2 う……それも嫌や。
男4 じゃ決定やろ。
女2 えーマジで?じゃあ副部長は?
男4 ジャンケン。
男1 待てや。副はやっぱり斎藤やろ。
男4 あ、賛成。
男3 おれぇ!?
女3 ほったら雅くんが会計?
男1 会計!?……ああ、まあいいですよ。
男4 おれは?
男1 ひら。
男4 その言い方嫌だな。
女2 雑用。
男4 ひどくなってる〜。

   みんな、笑い合っている。

男1 ほな、とりあえず出ろか。

   帰ろうとした時、

女4 みんな。

   間。

女4 みんな。悔しくないん?
男1 え?何すか?
女4 負けて、悔しくないん?
男1 えー……だって負けるてわかとったやないですか。
女4 何で?勝ってやろう言う気はなかったん?負けて悔しない言うんはそれだけ真剣にやってない言うことやろ?

   間。

女4 ほんっきでええ加減にせえよ、君ら。演劇好きやないんか?一所懸命やって、せめて自分らが満足いくようなもん作ろうと思わんの?負けて当たり前なんて思うような出来やったら始めから出んかったらええやろ!本気でやる気ないならマジで止めてや、演劇部。真面目にやっとる奴らに失礼やわ。君らの態度は。何でもっと真剣にやらんの!?私は高三の頃、大会で負けたとき泣いた。一所懸命やったし、最高の出来になったし、自信もあったから泣いた。めっちゃ悔しかった。でも君ら今そういう気持ちあるか?ないやろ?なあ。……佐藤。
男4 はい。
女4 演劇、好きか。
男4 …………。
女4 何かOGの身であんまり口出しすることやないかもしれんけど。今の君ら見よったら腹立つわ。……私、もう来んけん。脚本も書かん。後は君らでやってや。

   女4、怒ったように帰る。
   しばらく沈黙。
   ゆっくりと全員去る。
   暗転。
   再び部室。
   女2がいる。
   女1、やってくる。

女1 こんにちはー。
女2 こんにちはー。あれ、どしたん?

   女2、ジャージに着替え始めている。

女2 今日は走ろうかと思いまして。
女1 珍しいね。
女2 これから毎日走りますよ。
女1 そうなん?
女2 昨日、先輩に言われたやないですか。悔しないんか、とかやる気ないなら止めろ、とか。
女1 ああ。
女2 あれでめっちゃ腹立ったんですよ。
女1 …………。
女2 私らだってそれなりに一生懸命やっとったのに。負けたときだって悔しかったですよ?でも私らの今の時点での最高の分を出し切ったから、もう悔いはないってことじゃないですか。それをあんなん言われたらむかつきますよ。
女1 ほんで、練習するん?
女2 しますよ。来年の大会、絶対勝ちますよ。先輩らの記録抜きますから。
女1 おお、先輩らの記録なんか大したことないけん、すぐ抜けるで。

   女3、男3、入ってくる。

女3 こんにちはー。
男3 お、中ちゃんジャージや。
女2 今日は走るで。さいちゃんも着替え。
男3 ええ?マジで?
女2 発声も読み合せもきっちりやるで。
男3 きっついなー。
女2 文句あるんやったら止め。
男3 ああわかったやるって。

   男3、着替え始める。

女3 なんか中ちゃんえらい気合い入っとるやん。
女1 昨日の先輩の言葉が悔しかったんやと。
女3 ああ、あれは私もちょっいむかっときたな。
女1 頑張ったってどうにもならんこともあるのになあ。
女2 どうにかしますよ。来年の目標は四国大会ですよ。県大ちゃいますよ。
女3 どうせなら全国目指せって。
女2 目指しましょうか。
男3 あ、でも雅は止める言うてたよ。
女2 ああ、私もそれ聞いた。
男3 昨日の先輩の言葉でやろ。
女2 あれ、関係ないわい。前から止めたがっとったやん。
男3 部員減るな。
女2 大丈夫よ。一人芝居でも出れるんやけん。
男3 うわ、恐。
女3 あんたにやれとは言わんやろ。
女2 ええー言うかもしれませんよ。
男3 おれ、そうなったらさすがに演劇部止めるけん。

   みんな、笑う。
   男4。入ってくる。

男4 こんにちはー。
全員 (口々に)こんにちはー。
男4 おお、こんなにいる!
女2 佐藤くん、今日は走るで。
男4 うわ、中山やる気やな。
女1 いつまでもつかな。
女2 そんなこと言わないで下さいよー。
男4 よっしゃ、次の大会県大行こう!
女2 やからしょぼいて。もっと目標は上にもたな。藤山先輩が出た年は県大まで行ったんやけん。
男4 ああ、藤山先輩に勝つ言うこと?
女2 そう!もうあの人の力借りんで。現役の力見せてやろや。
男3 んじゃ、おれ走ってこよ。
女2 あ、待ってや、私も行くって。
男4 ああーちょっと!おれが着替えるまで待ってよ!
女2 先行っとくけんー。
男4 そんなー。

   女2、男3、去る。
   男4、着替えている。

男4 先輩らは走らないんですか。
女3 私らもう引退やし。
女1 受験勉強せななあ。
男4 ええ。早いすよ。まだ九月やないすか。
女1 それくらいからせな間に合わんて。
女3 陽ちゃんの受けるとこ結構レベル高いもんな。
男4 あ、もう決まってるんすか。どこです?
女1 教えん。
男4 ええー教えて下さいよー。それくらい。

   女2、帰ってくる。

女2 佐藤!とっとと来い!
男4 あー今行くー!

   男4、慌てて着替える。

男4 何か、演劇部、却ってまとまりましたね。
女3 先輩への対抗意識やけどな。
女1 何でもええやん。まとまったんなら。……もう先輩は来んやろうけど。
女3 ま。今まで来とったんがおかしいんよな。
男4 じゃぼく、行ってきます。
女1 おお、頑張れ。

   男4、去る。
   音楽。

女1 来年、勝てるかな。
女3 勝つやろ。やる気んなったら出来るて。
女1 次の一年次第かもな。
女3 ちゃんと指導すりゃ間に合うわい。
女1 来年、観にいく?
女3 行く。模試と重ならん限り行く。
女1 じゃ私は重なっても行こ。
女3 あー裏切り者。
女1 せっかくやけん、勝つとこ見たいやん。
女3 そうやな。
女1 あ。そこ走りよるで(前を見て)。
女3 おー!頑張れ〜(手を振る)。

   間。

女3 私もちょっと行ってこよ。
女1 ちょっと、スカートで走るん?
女3 走らせんて。

   女3、去る。

女1 待ってや、わたしも行く。
女3 はよせえ。
女1 ねえ。
女3 何?
女1 良かったな。
女3 何が?
女1 みんな、演劇好きで。
女3 ああ。
女1 私、卒業してからもやるで。
女3 おお、私だってやるで。
女1 じゃ、行こか。
女3 ん。

   二人、去る。

―幕―

※注意
・舞台は愛媛松山です。

 

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