見捨てられた島への上陸4

 向かってくる残骸が大分減ってきたときのことだった。
 島の形の関係で、海流に対して微妙に斜めになっているサニー号後部で、サンジたちは向かってくる船や、ときには岩のようなものを蹴散らしていた。揺れるサニー号の上でバランスを取りながら、サンジはふと気配を感じて海から陸地側へと目を向ける。
「おいっ、また来るぞ!」
 フランキーが叫びと共に腕から何か出しているが、これも残骸だ。特に気にするところでもない。
「あ、くそっ、あっちに流れやがった!」
 大きめの残骸が船首の方に向かったのを見て、フランキーはそちらに向かう。その間も、サンジは島側──森の気配に注意を向けていた。
「おい、何か近づいて来てねぇか?」
 船に向かってくる小さな気配。こそこそした動きは、何かを企んでいるように思える。
「ああ? 小動物かなんかだろ。入り込んできても、あっちにはブルックが居るしな」
 問題ねぇよ、とゾロは海から視線を逸らさない。確かに気配は小さく、森から来ていることも考えると動物のようにも思える。だがサンジが見聞色で感じ取ったのは、間違いなく人の気配。
 クソ剣士の見聞色は大雑把過ぎる。
 サンジはタバコをくわえ直すと、ブルックたちの居る芝生側へと向かった。座り込んでいるシーザーと、少し離れたところでそのシーザーを見張っている──寝ているようにも見えなくもない──ブルックが見えた瞬間、突然視界が白く染まった。
「っ!? 何だ!?」
 声を出した瞬間、げほっ、と少し咳き込む。視界を覆うのは真っ白な煙。手で払ったぐらいでは消えない。この一瞬で相当な濃さが広がったようだった。明らかに人為的なものだ。
 慌てて見聞色を発動させながら芝生へと飛び降りる。何者かが船へ入り込んできた。驚いて立ち上がるブルックの前で、シーザーが引きずられていく。
「ぎゃああああ! 何だあああ!?」
 シーザーの悲鳴はそのまま島の方へと向かった。まずい。
 見えていないブルックも、その声でシーザーが船から離れたことを知る。サンジはそのまま芝生を駆け抜け、島の岩場へと飛び上がった。シーザーは3人の人間に担がれている。慣れた道なのか、森の中をすいすいと駆け抜けているのがわかった。
「待ちやがれっ!」
 とりあえず怒鳴ってみるが、当然なんの静止にもならない。くそっ、と一つ舌打ちしながら追いかけるサンジの隣に、ブルックが並んだ。
「待ちなさいいいいい! シーザーをっ、返しなさいいいいい!」
 早い。物凄い形相だった。一瞬呆気に取られて足が止まりかける。
「おお…凄い勢いだな」
「シーザーの見張りはっ! 私が引き受けたのですからっ!」
 逃がしませんよおおお、と更にブルックはスピードを速める。追いつけない。そもそも森の中こんな速度で走ったら──。
「危ねえっ!」
「え、えええええ!?」
 少し遠くでぎしぎしと妙な音がしているのには気付いていた。
 ブルックたちがその場にさしかかろうとしたとき、巨大な木が2人めがけて倒れてくる。
 勢いの止まらないブルックは慌てて剣を構えた。斬る気か。一瞬そう思うが、倒れてきた木に、ブルックは横なぎに剣を突き立てると、その勢いのまま左へ跳んだ。思わずそれを見送ったあとサンジも慌てて横へ避ける。ずうううん、と重い音を立てながら木はそのまま地面へと落ちた。いくつかの木や枝を巻き込みながら大きな砂埃があがる。
 残響が消えたあと、シーザーたちを見失ったことにサンジは気付く。
 だがそれを気にしている暇はなかった。
「何だ今の音は!?」
「おい、何だてめえら!」
 数人の男たちがこちらへ怒鳴り散らしながらやってくる。いかにも海賊といった風貌のガタイの良い男が5人。
「あ、あいつらがシーザーを!?」
 サンジの元へ戻ってきたブルックが、剣を手にしたまま男たちを睨みつけた。
「いや……違うな」
 木を倒したのも、こいつらではない。
 廃墟となっているはずの島で、複数の勢力。面倒なことになりそうだ。
 ナミさんたちは無事だろうか…。
 新たなタバコに火をつけ、島の中に居るであろう美女たちのことを思い浮かべながら、サンジは武器を構えて向かってくる男たちに対し身構えていた。










「んん? 何の音だ」
「森の方で何かあったな、ありゃ」
 フランキーが船の後部に戻ったとき、ちょうど大きな音が響いてゾロが振り向いた。
 シーザーが攫われ、ブルックとサンジが追って行ったことはフランキーも把握していたが、ゾロには特に説明しない。ふうん、とゾロも興味なさげにそれ以上聞くこともなく視線を戻す。
「そろそろ仕舞いか?」
 向かってくる残骸も、襲ってくる海賊船もなくなり、少しつまらなさげにゾロは言う。フランキーはそれに笑った。
「大分海流が動いたからな。このままだと今度は船が後退しそうだ…」
 碇は下ろしてあるが、今度は島から離れるように動くかもしれない。無茶な海流に翻弄されているサニー号が少し心配だ。勿論これぐらいで壊れるやわな作りはしていないが。
 フランキーがそう思いながら海面に目を向けたとき、何やら光るものが見えた。
「んん?」
 次の瞬間にはそれが目の前に迫ってくる。
「うおっ!?」
「何だあ?」
 がちゃん、という音と共にサニー号後部の柵に引っかかったのはかぎ縄。誰かが、海からサニー号に上ってこようとしている。
 ぐいっ、と引っ張られたロープの先を見てみるが、暗さのためよくわからない。
「ニップルライト!」
 とりあえず胸から出した光を当ててみれば、驚いたような顔をした男たちと目が合った。もうここまで登ってやがんのか!
「何だ、てめえら。難破した船の船員か?」
 問いかけてみれば何やら顔を見合わせ合う男2人。ロープに取りついているのは1人で、もう1人はその男に背負われていた。
「面倒くせえ、落とせばいいだろ」
 男たちが答える前に、そんな問答に興味のないゾロが刀をロープに向ける。
「ま、善人面にゃ見えねえしな」
 フランキーがそう言って同意するより早く、ロープは切断された。だがその一瞬を狙ってか、偶然か、もう1本のかぎ縄がロープを切るために出したゾロの腕に引っかかる。
「んな!?」
「おいっ!?」
 ゾロの体が宙に浮く。大男2人分の体重に引っ張られて、ゾロはそのまま海へと落ちた。どぼん、と派手な水しぶきがあがる。
「あーああ、何やってんだオイ」
 覗き込めば、もう男たちとゾロが対峙しているのがわかった。1人は男を背負ったまま、器用に立ち泳ぎをしている。先ほど一瞬見えた特徴から言って、魚人か、魚人の血を引いているのかもしれない。それに対し、ゾロも海の中の割には安定した構えを見せている。まあ能力者でもないから溺れることもないだろう。自分まで船を離れるわけにはいかないので、そちらはそのまま見守ることにする。戦いが終わったら梯子でも下ろしてやるか。
 そう考えていたとき、背負われた男が何やら姿を変え始めているのに気付いた。
「……能力者か」
 ゾロの呟きのような声が、意外によく響く。男たちはそれに笑い声をあげた。
「そうさ! おれは魚人の血を引いていながら悪魔の実を食べちまった呪われた男ウィル! 歴史上にも居ないだろうなぁ、こんな間抜けはよ!」
 自虐的な言葉を高笑いで叫ぶのは背負われた男。だから背負われているのか。変形の仕方からいってゾオン系だろうとは思ったが何の動物かまではわからなかった。背負われているとはいえ、大分水に浸かっているが能力が使えるものだろうか。
「いや、前に魚人島で見たが…」
「何ぃいいいい!?」
 ゾロの突っ込みに、予想外だったのか男2人が目を丸くする。何故だか少し悔しそうにも見えた。ウィルは焦ったように自分を背負う男に目を向ける。
「カール! お前、こんな間抜けは兄ちゃんだけだって散々言ってただろうが!」
「お、おれだってそう思ってたよ! っていうか兄ちゃんその格好で暴れないで! 爪が刺さるから!」
「…………」
 どうやら兄弟らしい。
 2人のやりとりには特にコメントを入れず、ゾロが言いたいことだけ男に言う。
「で、何の用だ?」
 あいにく間抜けの相手をしてる暇はねぇ、と相変わらずの挑発口調。むしろ暇になったのでどうせなら相手したいと思ってるんじゃないかとフランキーは思ったが突っ込まない。間抜けでも新世界に居るゾオン系能力者。運ぶは魚人の血を引いた弟。ゾロは海の中。ハンデを考えれば意外に手こずるかもしれない。とりあえず話し合いで終わる気は全くしない。あからさまな敵意が、男たちにはあった。
 ゾロの言葉に、間抜けな魚人(兄)が答える。
「この島はおれたちの縄張りだ、近づく船の連中は沈める決まりなんでな」
「お前たちも海流に捕まった間抜けな海賊団だろ。新世界には来たばっかかぁ? 残念ながらその旅はここで終わりだっ!」
 弟が叫びと共に突進してきた。さすがに魚人の血を引いているというだけはあるのか、人を背負いながら信じられない速さだ。上に乗った弟が獣の爪でゾロに向かって手を伸ばす。がきん、とゾロがそれを刀で受けて大きな音を立てるのがわかる。
 典型的な悪役台詞の兄弟に、遠慮する必要はないとわかったか、いや、最初から遠慮するつもりなどなかったのか、ゾロも臨戦態勢に入った。しかしやはり海面で魚人の動きを捉えるのは難しい。目や気配では十分追えても、ゾロ自身の動きが追いつかない。兄の方も魚人と悪魔の実の力が相まって、信じられない力を発揮している。流れていた砲台のようなものが爪の一振りで豆腐か何かのように軽く切れたのにはさすがに目を瞠った。
 オイオイ、サニー号の側であんなのに暴れて貰っちゃ困るぞ。
 思うが、船から離れろとゾロに叫べば却って船が狙われそうで言葉に出せない。代わりに援護しようとフランキーは腕を構えるが、ゾロと距離が近い上に早すぎてそれも難しかった。
 そのとき、ゾロが一旦海へと潜るのが見えた。体を浮かすことに力を使うより、いっそ潜った方が自在に動けるとの判断だろう。水中で魚人に負けないほどの機動力を発揮したことは、もう聞いていた。この暗闇でおそらく視界は効かないだろうが、気配で敵の場所もわかる。だが潜った瞬間、危険察知能力が高いのか、兄弟は凄い勢いでそこから離れていった。
「……逃げたか?」
 さすがに遠方まで海中から追いかけるのは無理だろう。ここはまだ海流も強い。というか、追いかけたりしたら確実に迷子になるのでそれをしそうなら止めなければならない。暗闇の海で迷子など、冗談ではない。
「おい、ゾロー! 一旦あがれ!」
 しばらくするとゾロが浮かんできた。おい、随分遠いな。マジで泳いでたのか。
 思った途端、また兄弟が戻ってくる。
 ゾロがそれを見て沈めば、再び離れた。
「おいおいおい…」
 速さでは追いついても、呼吸だけはどうしようもない。逃げられ続けて、息が続かなくなったところを狙われても困るだろう。ゾロは再び上半身だけ海面から出した姿勢で兄弟と対峙した。今度は敵の攻撃を刀ではなく腕で受けた。刀が間に合わなかったのか? 焦るが、ゾロには特にダメージがなさそうだ。おまけに笑ってやがる。あれが武装色硬化という奴なのかもしれない。
「遊んでんじゃねぇよ…。しかし、振り出しに戻る…か。……仕方ねぇな」
 フランキーが船から降りるつもりはない。錦えもんたちはまだ男部屋に引っ込んだままだし、先ほどシーザーを攫った連中のことを考えると、まだ陸地側にも敵は居る。サニー号を空けるわけにはいかない。
 フランキーは少しその場から離れ、材料と道具を取ってくると、ついでに船に飛び散っていた他船の残骸を使って急ごしらえのイカダを作る。
「ゾロっ! それ使え!」
「させるか、ぶおっ!」
「兄ちゃん!?」
 イカダを落とした瞬間、ゾロが刀を使って大きな水しぶきを作った。兄側が悲鳴を上げて弟が慌てている。兄の力が抜けたのに気付いてすぐさま距離を取った。本来ならそれは正しい選択だったかもしれない。
 だが。
 兄弟たちの目にはすぐに、イカダに乗って刀を構えるゾロの姿が見えただろう。回り込むようにして逃げる魚人に、ゾロはしっかり足を踏みしめて狙いを定める。
 遠くに逃げなければ、と気付いたときには遅かった。
「竜巻っ!」
「うおおおおっ!」
 ゾロの刀の衝撃を、兄は何と受け止めた。だが、それも一瞬のことでそのまま空高く巻き上げられる。
「ああああああ」
「に、兄ちゃんんんんん!?」
 吹き飛ばされていく兄を弟は必死で追いかけていった。あの距離だと無事追いつけるかどうか怪しい。能力者だ。間に合わなければそのまま沈む。
 しばらく見送ったが、その辺の判別は出来なかった。無事でもしばらくは戻ってこれないだろう。そもそもゾロの攻撃の直撃を受けている。
 フランキーはやれやれ、ととりあえずハシゴを下ろす準備を始める。
「って、ゾロ! どっちに向かってんだっ!」
 サニー号が見えているだろうに、残骸を避けた瞬間からあらぬ方向に行ってしまうゾロに、フランキーは慌てて叫んでいた。










 10代後半かそこらの、男女3人組が、シーザーの目の前に居た。シーザーの目をじっと見つめてくるのは短髪の女性。3人とも麦わらたちよりは少し下といったところか。背は高いが、まだ成長途中。だが実験に使うには育ち過ぎてるな…とシーザーは3人を見ながらそう思う。子どもを見ると、つい実験体として考える癖がついてしまっているようだ。
「いやぁ、助かったぜ! 悪い海賊に捕まってたところだったんだ。あいつらひでぇ海賊でよぅ。恐ろしい科学者に売り飛ばされるところだったっ!」
 サニー号から突然シーザーを担いで逃げた3人組。最初は混乱のまま叫び、次にジョーカーの助けかと思ったが、その線はなさそうだった。いかにも廃墟で暮らしていると思わしき薄汚れた格好。そしてどこかの廃墟の一角でシーザーをおろしたあとも、ひたすら黙っている様子から、計画的なものでもないのかと判断する。
 とりあえず同情を引くよう泣き真似のように顔を歪めてみるが、そのとき既に3人の視線はシーザーの表情には向かっていなかった。
 中央の女性、そして両側の男2人が見ているのは、シーザーの錠。
「あ、これか? あ、あいつらに付けられちまって…どうにか取れねぇかな」
 錠の鍵はあの船の中にあるのか。それとも長鼻が持っているのか。ローが預かっている可能性もある。錠開けを得意としているものでもいれば、本物を奪わなくても何とかなるのだが。この子どもたちにそんなツテはあるだろうか。いや、むしろ何とかジョーカーに連絡を取って貰う方法は──。
 ジョーカーが泣き笑いのような顔のまま考えていると、やがて女性が腰につけていた何かを取り出した。
 ……ナイフ?
「ほ、ホントにやるの?」
 震える声で言ったのは隣の男側。短髪の女性に対し、男2人の方は長髪だった。発言した髪をくくった方の男は、縋り付くように女性の腕を取る。女性よりは年下なのかもしれない。
「やるって言ったでしょ。……こんなチャンスもうないわよ」
「…ミキの言う通りだ。それに、おれたちはこれから海賊になるんだ…。これぐらいのこと、出来なくてどうする」
 海賊?
 これぐらい?
 ナイフを構えた女性の覚悟を決めた顔。
 シーザーの頬を冷や汗が流れる。
「ちょっ…待て、お前ら、一体…」
 男2人がシーザーの両脇に回り、がしっとその腕を取られる。先ほど決して軽くはないだろうシーザーを担いで走ってきた2人だ。力も体力も、かなりのものだった。
「動かないで。私たちにはこれが必要なの。大丈夫、殺しはしないから…」
 そう言って、ぴたりとシーザーの手首に当てられるナイフ。
 …海楼石が目的かっ!?
 気付いたシーザーは必至で言い募る。
「待て待て待て! か、海楼石が必要なら、奴らまだたんまり持ってやがる! 大体おれに手を出せばとんでもない大物を敵に回すことになるぞ! いや、その前に何でそんなものが必要なんだ。お、おれでよければ話を…」
 ジョーカーという後ろ盾のことを話すか、子どもたちを油断させるか、いろいろ頭に浮かんだ末、全部口に出してしまってわけがわからなくなる。しかし3人は聞こえてないのか、聞き入れる気もないのか真剣な顔をしたままナイフと海楼石の錠を見つめている。
「…海楼石はここにしかないと思うよ。…自信ないけど」
「お前の鼻は見事この男の海楼石に気付いただろう。お前が言うなら大丈夫だ」
 鼻っ!? 海楼石に匂いなんてあるのかっ!?
「あと大物を敵に回す? ってのはやばいかな?」
 お、でも全部聞いてくれていた。
 よし、ならこっちで責めよう。
 嬉々としてジョーカーのことを説明しようとしたとき、ミキと呼ばれていた女性が呟くように言った。
「だったら…やっぱり殺すしかないかしら…」
 埋めてしまえばわからないわよね? 万一見付かってもあの海賊団の仕業にすればいい。
 ミキの表情はどこか頼りなげなのに、言ってることが恐ろしい。
 男2人も神妙な顔で頷いた。
 ナイフが、今度はシーザーの胸に向かって突き出される。
「ぎゃあああああ! 助けむがっ」
 さすがに叫ぼうとするが、右側から口を押えられて言葉が出なくなる。必死で暴れても無駄だった。
「……おい」
 そこに突然かかった低い声に、3人の動きは止まる。
「これはどういうことだ?」
 トラファルガー・ロー。
 いつの間にか、廃墟に入り込んできた男が、シーザーを見ている。
「んんんんん!」
 ローぉおおおおお!
 この状況では奇跡の救世主だ。何だか輝いてさえ見える。シーザーは涙を流して必死で助けを求めた。口を塞がれているため言葉にはならなかったが。
 ちなみにローの側には3人の子どもとチョッパーが居たが、シーザーの目には入らなかった。
「み、ミキ姉ちゃん! ちょっと待って!」
「Room」
 子どもたちは慌てているようだったが、何か言うより早くローの能力が発動される。次の瞬間には、シーザーはローの腕の中に居た。
「う、わっ…」
 驚いたのか、子どもたちが後退さる。
「た、助かった…」
 シーザーは思わず呟くと、先ほどまでの恐怖を忘れて抱え込まれたままローに怒鳴る。
「おいっ、おいこらっ! おれ様は大切な人質だろうっ! こ、殺されるところだったぞっ!」
「みてえだな。お前らどういうつもりだ」
 ぎろり、とローが子どもたちを睨む。10歳前後の子ども3人と、10代後半らしき子ども3人。計6人は少しずつ固まった。
「シバ? この人は? どういうことなの! っていうか今の何!?」
「の、能力者なんだ。今から説明する。ローさんも…お願いだから睨まないで…」
 シバと呼ばれた少年はミキたち年長の子どもたちを抑え、怯えながらもローを見上げてしっかりとそう言った。


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